本書は、油彩画における写実的な表現を、その進め方や描き方の違いにスポットをあて、作品完成までの様々な過程を解説した油絵スタイル&プロセス集です。
3名のアーチストとカルチャースクールの生徒6名による14作例を掲載しています。
油絵は、画箱セットとキャンバスさえあれば、簡単に始められます。
油絵は敷居が高いと感じている人も多いようですが、水彩やアクリルに比べて乾きが遅いこと、筆の手入れが必要なこと、それさえ知っておけば、これほど堅牢で、何度もやり直しができ、納得のいくまで描くことのできる素材はないでしょう。
そして油絵具は、作者の様々な要求にこたえてくれる、表現の多様性に富む画材でもあります。
薄い重ね塗り、タッチを効かせた厚塗り、ナイフによる暑い盛り上げ...etc
また溶き油を組み合わせることにより、他の画材では出せない透明感のある深い色合いや、マチエールといわれる様々な質感のある絵肌が表現できます。
それは作品づくりの試行錯誤でたどり着く、描き手の表現そのもので、油絵の大きな魅力です。
百人いれば百の描き方や進め方がある中で、本書は、初心者向けの描き方をはじめ、タッチと色づくりのヒントとなる印象派風から、地塗りを生かした効果的描き方など、特に油絵の醍醐味、面白さが伝わる作品を作例に選びました。
これから油絵を描こうという人、自分の描き方を模索している人の、良き参考書とならんことを願っています。
森田和昌B5判
112ページ
油絵 Style&Process 目次
 | P4.生物基礎「果物とポット」- 初めて描く油絵の基本
- 形・陰影を観察して忠実に描く
- 基本画材で描く
|
 | P12.生物「林檎と瓶」- ライティングでモチーフを演出する
- 古典的な視点構図で描く
- 影のくすみのない、みずみずしい生物画をめざす
|
 | P18.生物「ヒトデと貝と瓶」- 凹凸のある厚めの有色下地で描く
- モチーフの色合い、色調を変えて描く
- コンストラストを抑え、柔らかいトーンで描く
|
 | P24.生物「ひまわり」/大谷靖子 作品- 地塗りの効果をそのまま生かして描く
- マチエールに高低差をつけ重厚感を出す
- 省略と描き込みで見せ場をつくる
|
 | P34.風景「印象派スタイル」- 奥行や広がりを感じさせる絵づくり
- 色彩の鮮やかさを生かす色使い
- タッチ(筆触)で臨場感、空気の動きを伝える
|
 | P40.風景「建物」- 旅先の写真を基に描く
- 鮮やかな現場の印象を色合いに反映させる
- 建物の構造、遠近感、地平線を意識する
|
 | P46.生物「トルコキキョウ」- モチーフを主観でとらえ、感覚的に描く
- 細部にこだわらず、必要な要素を見極める
- フローティングキャンバスに描く
|
 | P54.動物「猫」- 写真を基に動物を写実的に描く
- 色調を統一して雰囲気作りする
- 変形サイズのMDFボードに描く
|
 | P60.人物「娘」- 写真を基にした正面からの人物表現
- 基本技法・グレースで色を重ねる
|
 | P66.人物「女性像横顔」- 横顔写真から人物を描く
- 同寸写真で比較を楽に、正確な位置付けで描く
- 顔の骨格を意識して描く
|
 | P74.シュールレアリスム「遊泳」- 写真を組み合わせてシュールな空想世界を描く
- 異質なモチーフを同一空間にまとめる
- 地塗りを生かした背景にモチーフを写実表現する
|
 | P78.構成「羊と道と」- マチエールを施した下地で描く
- 写真を基にイメージ構想する
- 道具、材料を知り、適材適所で使う
|
 | P86.木戸真亜子 作品 |
 | P90.千菅浩信 作例と作品- 風景「道」 CHISUGA'S STYLE 東北の見慣れた風景を、写真から描く
|
 | P96.森田和昌 作例と作品- 静物「ポットと食べられないイミテーションの桃」 MORITA'S STYLE 'ブルーグレーのトーン背景'でイミテーションの果実を演出
|